前回の続きです。
新後見制度についての民法の改正案が参議院でも通過成立しました。2年後の秋頃までには新後見制度が開始されることになります。これと同時に、社会福祉法も改正されます。
前回お話しましたが、後見人が途中で辞められるようになることは家族にとって画期的なことです。現実に後見人業務をしている私としましても、ご家族や本人にとって良い改正点であると考えます。しかし実際はどうでしょうか。後見人がいなくなって、本人はこれからどうするのでしょうか。誰がサポートしますか?そもそも身近に親族がいれば良いのですが、私がこれまで後見人(保佐、補助含めて)をした方はほとんど身近に親族はいませんよ。だからアカの他人の専門家らが後見人になるしかなかったのです。この問題を補うことを想定して同時に成立した改正社会福祉法により、身寄りのない方の包括支援の在り方が変わります。これまでの認知機能の衰えた方への福祉サービスから、独居老人へのサービスも含まれるようになります。これはこれで時代の変化に伴う福祉の在り方として理解しますが、すごい数の案件になりますよ。現在の日本の独居老人は800万人超えで、このうち身近に家族がいない方は300万人ほどです。名古屋市の人口230万人よりも多いです。もちろん自立できている方もいらっしゃいますがどんどん増加傾向にあります。包括支援センターの職員らで対応するとでもいうのでしょうか。現在、身寄りのない方向けの、福祉サービス以外のたとえば葬儀、火葬手続き、死後事務などを請け負う民間のサービスが有ります。もちろん有料です。契約の内容にもよりますが、まあまあの金額です。今後、このサービスを国の支援事業で補うとのことで安価にサービスを提供する計画です。もちろん税金で補われます。政府はサービスの提供の前に受け皿を考えているのでしょうか。現場はパンクしますよ。それに代理権の範囲も不明確な点が出てきます。日常の金銭管理はサービスに含まれるとのことですが、それだけで済まない金銭の必要性が生じた場合どうするのでしょうか。銀行の窓口で委任状を持って行って対応してくれるのでしょうか。定期預金の解約まで応じてもらえると到底思えませんが。
結局のところ、身近に家族がいる方は後見制度の見直しは歓迎させる点が多々あることでしょう。そうでない方にとっては、本人やサービス提供者にとってもかえって混乱が生じるのではないでしょうか。福祉サービスの契約ができればよいですが、そもそも認知症の方は契約できません。(新制度の)補助人がいるうちに本人のために福祉サービスを契約をして、辞任した後も契約が生かせられることを想定しているのかもしれませんが、新たな契約事項が生じた場合、再び補助人を付けるとでもいうのでしょうか。
現在、各自治体の後見センターなどで市民後見人の育成が進んでいます。市民後見人とは、専門職のチカラで解決が必要な問題点を含んでいないケースで活躍される後見人です。おもに見守りが主体になりますが後見人には変わりないので各種契約も代理で出来ます。自治体にもよりますが無報酬の地域もあります。専門職後見人の必要性がなくなった事案(不動産を売却したとか遺産分割が終わったなど)で市民後見人に引き継ぐことは、現在でも有ります。身近に家族がいないケースではこの流れになっていくのではないかと思われます。これは新民法の改正が無くても可能です。
なんでもそうですが、新たな試みに対して不安はつきものです。この新制度も同様、新民法が施行されてしばらくたってから様々な問題点が見つかることでしょう。後見人(新制度は補助人)業務の最前線に立つ私たち専門家らも、新たな問題にはその都度対応して、出来る限り本人の意思に沿った支援をしていく必要があることには現行法と変わりありません。それから、家族とのコミュニケーション不足が現行法への不満を招いていることもあります。この点は結構大きいです。家族との距離感を誤ると、どんな法制度であってもうまくいかなと思いますね。